介護タクシー業務では、自社車両が満車・運行重複の場合でも、地域の信頼できる提携事業者に送迎を委託することで、利用者や病院・施設のご期待に応える「相互配車(助け合いネットワーク)」が不可欠です。
しかし、「再委託(又貸し)の禁止」「元請け事業者の信用・顧客保護」「委託先が見つかった場合/見つからなかった場合の確実な連絡」を徹底しなければ、重大なトラブルや顧客離れにつながります。本マニュアルでは、これら3者(第一依頼事業者・受託事業者・利用者/施設)の合意形成を含む実務ワークフローを完全解説します。
目次
1. 提携相互配車の3大鉄則
鉄則 1:再委託(又貸し・孫請け)の完全禁止
依頼を受託した提携事業者が、さらに別の第三者(孫請け)へ再委託することは法令・約款およびシステム仕様上、永久に禁止されています。
- 第一依頼の事業者(元請け)のみが委託先を打診・指名できます。
- 受託事業者が運行できなくなった場合は、絶対に勝手に他社へ回さず、「辞退(元請け事業者へ差し戻し)」を行わなければなりません。システム上も受託先からの再委託ボタンは遮断されています。
鉄則 2:自動顧客防衛(元請け事業者の信用・リピート保護)
「提携先に依頼を回したら、お客様を横取りされてしまうのではないか」という不安を完全に解消するため、CareTransport V2 では自動顧客防衛機構が組み込まれています。
- 受託事業者が当日の送迎を担当した場合でも、お客様や施設ポータルの予約履歴から「前回の内容でかんたん再予約」を行う際、100%自動で【第一依頼事業者(元請け)】宛てに新規依頼が作成されます。
- 元請け事業者の長年の営業努力と信用は保護され、安心して地域の仲間に運行を委託できます。
鉄則 3:利用者・施設との事前合意形成(完全透明性)
福祉有償運送や介護タクシーにおいて、「どの事業者の誰が送迎に来るか」は要介護者・ご家族にとって極めて重大な安心要素です。
- 第一依頼事業者は、提携先を確保した時点、または見つからなかった時点で、速やかに利用者・病院・施設へ連絡し、受入の承諾を得るか、辞退の了解を得る必要があります。
- 無断で別会社の車を向かわせる行為は重大なクレームの原因となります。必ず案内連絡を行い、ポータル上で「案内済」「承諾済」を記録します。
2. 全体業務フローチャート
自社が満車で受け付けられない場合、以下の二大分岐に沿って確実に業務を遂行します。
- 提携事業者がシステムで「受託(配車確定)」を回答
- 第一依頼事業者から利用者/病院・施設へ電話・連絡
- 【案内内容】自社満車のため信頼できる提携事業者〇〇を手配した旨
- 利用者/施設の意向確認:
- 受け入れ(承諾) ➔ 配車完了・提携先が運行実施
- 拒否(見送り) ➔ キャンセル・枠解放(他手段検討)
- ポータルへ「案内済」「承諾済」を記録
- 提携事業者から「辞退(自社へ差し戻し)」の回答
- 第一依頼事業者が判断:
- 別の提携先を探して再度打診する
- または地域全体で満車のためブッキング辞退(お断り)
- 第一依頼事業者から利用者/病院・施設へお断り連絡
- 誠実にお詫びし、近隣の事業者一覧やコールセンター等を案内
- システム上で「辞退(満車・車両都合)」を実行
3. 【パターンA】委託先が見つかった場合の標準手順
提携事業者の受託確認と運行条件の点検
提携先がポータル上で「受託」を承諾すると、予約ステータスが更新されます。第一依頼事業者は、以下の事項を速やかに確認します。
- 利用者の身体状況(車椅子・リクライニング・ストレッチャー等)に提携先車両が適合しているか
- お迎え場所・目的地の階段・段差介助の要否が伝わっているか
- 提示見積金額に齟齬がないか
利用者・病院・施設への事前案内連絡(電話トークスクリプト)
第一依頼事業者の責任において、速やかに利用者または施設の依頼担当者(ケアマネジャー・医療ソーシャルワーカー)へ連絡します。
この度〇月〇日〇時のお迎えのご依頼をいただき、誠にありがとうございます。
大変恐れ入りますが、当日は自社車両がすでに満車となっておりましたため、弊社の信頼できるグループ提携先でございます『〇〇介護サービス(電話番号)』様にお声がけし、お車とお時間を確保させていただきました。
介護資格を持つ大変親切なドライバー様ですので、ご安心いただけます。
こちらの提携便でのお手配でよろしいでしょうか?」
〇〇様のご退院搬送(〇月〇日〇時)について、当社のリフト車が運行重複のため、提携ネットワーク加盟の『〇〇福祉移送』様に打診し、ストレッチャー対応車両を押さえました。
概算料金および介助仕様は当社と同等で手配可能です。
施設・病院様、およびご家族様のご都合として、こちらの提携便で進めさせていただいてよろしいでしょうか?」
利用者・施設側の回答による分岐対応(受け入れ vs 拒否)
【承諾】受け入れの場合
「助かりました、そちらの提携便でお願いします」と承諾をいただいた場合:
- 事業者ポータル予約詳細で「承諾済」ボタンをクリックして記録します。
- (ネット操作可能な施設・利用者の場合、ポータル画面上の「提携便を承諾する」ボタンを押していただくことも可能です)
- 提携先事業者へ「利用者様の承諾をいただきました。当日の運行をよろしくお願いいたします」と電話またはメッセージで申し送りを完了します。
【拒否・見送り】断られた場合
「いつもの御社じゃないと不安なので」「今回は家族が送迎します」と断られた場合:
- ご意向を尊重し、丁重にお礼を申し上げます。
- 事業者ポータル予約詳細で「辞退・見送り」ボタンをクリックして記録します。
- 速やかに提携先事業者へ連絡し、「利用者様のご都合により見送りとなりました」と伝え、予約をキャンセルして相手事業者の車両枠を解放します。
4. 【パターンB】委託先が見つからなかった場合の標準手順
提携先からの辞退(差し戻し)受領と再検討
打診先の提携事業者が満車等で「辞退」を回答した場合、予約は自社ポータルへ「差し戻し」として自動で戻ります。
ポータル上に「提携事業者より辞退(差し戻し)」アラートが表示されます。
① 別の提携先へ再打診する:自社の提携パートナー一覧から別の事業所を選択して「提携委託打診」を再度行います。
② ブッキング辞退(お断り)する:他の仲間もすべて満車等で手配が不可能な場合、速やかにお断りの判断を下します。
利用者・施設へのお断り連絡(電話トークスクリプト)
介護タクシーを探している利用者や相談員は、回答が遅れるほど他の手配に支障が出ます。手配不可と判明した時点で、1分でも早く連絡を入れることが最大の信義則です。
〇月〇日〇時のお迎えの件について、大変長らくお待たせいたしました。
自社車両の調整および地域の提携ネットワーク各社にも問い合わせを行いましたが、あいにく全車すでに予約で埋まっており、どうしてもお車をご用意することができませんでした。
ご期待に沿えず、ご不便をおかけしてしまい、誠に申し訳ございません。
もしよろしければ、近隣の福祉タクシー協会や、別の運行事業者様をご案内させていただきましょうか?」
システム上での辞退処理
お電話でお断りの了解をいただいた後、ポータル上の操作を行います。
- 予約一覧から対象の予約を開きます。
- 操作ドロップダウンから「辞退(お断り)」を選択します。
- 辞退理由コードで「満車」を選択し、必要に応じて詳細(「提携各社も満車のためお断り連絡済み」など)を入力して実行します。
- 予約ステータスが「辞退(Declined)」となり、利用者・施設側の画面にも適切に反映されます。
5. 各ポータルでの画面操作ガイド
事前登録済みの提携パートナーから委託先事業所を選択し、概算見積金額と申し送り伝言を入力して「委託を打診する」を押します。
利用者・施設への電話連絡結果をワンクリックで記録できます。ステータスは一覧テーブルにも小型バッジ(例:提携案内済、提携承諾済)として即時反映されます。
他社から委託打診が届くと、一覧に黄色の「受託依頼あり」バッジが表示されます。詳細を開き、担当ドライバーを指定して受託するか、満車の場合は辞退理由を入力して差し戻します。
依頼先事業者が提携配車を手配した場合、水色の「提携事業者による送迎のご案内」カードが表示されます。受託事業者の屋号・連絡先・車両仕様が明記されます。
施設スタッフは電話をかけなくても、ポータル画面上のボタンを1タップするだけで承諾・見送りを回答できます。